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最高裁判所第三小法廷 昭和59年(行ツ)49号 判決 1988年3月01日

鳥取県米子市米原五六四番地

上告人

高林機材株式会社

右代表者代表取締役

高林健治

同所同番地

上告人

高林鉄道資材株式会社

右代表者代表取締役

高林健治

同所同番地

上告人

高林通商株式会社

右代表者代表取締役

高林健治

同所同番地

上告人

高林興産株式会社

右代表者代表取締役

高林健治

鳥取県米子市夜見町二八八〇番地

上告人

高林工業株式会社

右代表者代表取締役

高林健治

鳥取県米子市西町一八番地の二

被上告人

米子税務署長

兼松忠次

右指定代理人

菅谷久男

右当事者間の広島高等裁判所松江支部昭和五七年(行コ)第一号法人税額等更正処分取消請求事件について、同裁判所が昭和五九年一月二五日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があつた。よつて、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告人らの上告理由について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。右違法があることを前提として是認する所論違憲の主張は、失当である。論旨は、採用することができない。

よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 伊藤正己 裁判官 安岡満彦 裁判官 長島敦 裁判官 坂上壽夫)

(昭和五九年(行ツ)第四九号 上告人 高林機材株式会社 外四名)

上告人らの上告理由

一、法律(寄付金)解釈の誤りについて

1 上告人らが「第一高林産業」「第二高林産業」及び「第三高林産業」(以下「第一高林産業」及び「第三高林産業」を含めた場合は単に「親会社」という)に支払つた負担金を法人税法第三七条五項(以下単に「法三七条」という)にいう寄付金に該当するとしていますが、これは次にのべる如く「法三七条」に該当するものではなく「法三七条」の解釈を誤つたものであります。

2 負担金は「法三七条」にいう資産(金銭)の無償による贈与ではありません。

(ア) 上告人らは何れも青色申告の営利を目的とする独立の法人であります。

資本金僅か三百万円で土地建物機械等の不動産はありません。

この上告人らが「親会社」及び「第二高林産業」に何の給付もないのに資本金に匹敵する位の金銭(後述の五項目基準で算定されたもので上告人毎に異なる負担金)を無償で贈与しなくてはならぬという客観的な経済的合理的な理由は何もありません。

この様な贈与をする事は上告人らの純資産の減少(損失)となり運転資金は欠乏したちまち債務超過となり「親会社」及び「第二高林産業」よりの給付(後述)のない限り一年もたたぬ内に倒産してしまう事は経験上明らかに目に見えております。

(イ) 贈与とは民法五四九条に示す如く「当事者の一方が自己の財産を無償にて与える意志を表示し相手方が受諾を為すに因りてその効力を生ず」となつております。

上告人らは「親会社」及び「第二高林産業」に倒産に直結する様な負担金を無償にて与えるという様な意志表示をした事はありません。

又上告人らは「親会社」及び「第二高林産業」から無償で呉れるのか有難うなどといわれた事は一度もありません。

上告人らは「親会社」からは後述(ウ)項(a)(b)(c)(d)にのべる給付を、「第二高林産業」からは(f)にのべる給付をうけておりその反対給付として合意の上負担金を支払つたものであります。

上告人らはこの負担金を2、(ア)にのべた如く何の経済的、合理的な理由もないのに倒産覚悟で支払う訳にはいきません。

「第一高林産業」が当初そんな事を強要するなら上告人役員はじめ従業員は全部退社してしまいます。

当時は人手不足の時代でありどこえでも容易に就職する。残るのは「第一高林産業」の代表取締役ただ一人となつてしまいます。

従来からの実働従業員がおらなければ営業は中断してしまいます。営業中断になれば「第一高林産業」は誰も相手にして恐れず即倒産になつてしまいます。勿論上告人らは存在できません。

(ウ) 会社分割の話は昭和四六年頃から「第一高林産業」の社長からあり度々会議を行い当時の「第一高林産業」役員及び営業課長(分割後は上告人らの日常業務を担当する現業役員)との間に次にのべる合意に達しました。

(a) 「第一高林産業」の責任において従来「第一高林産業」が行つてきた営業を上告人らが円満に引継げる如く得意先の了解を取付ける。

(b) 同様の事は仕入れ先に対しても行う。

(c) 上告人らは資産的に甚だ弱体であるから運転資金の借入れ等については「親会社」が担保提供したり保証人となる、又「親会社」から直接貸付等もして資金的には困らない様にする。

上告人らの新しい設備投下は「親会社」で行う。

(d) 上告人らが独立しても商品の仕入販売だけの知識では独立会社の経営は出来ないから必要に応じてその都度「親会社」の社長が指導する。

(e) 但し「第一高林産業」は商品販売の営業を廃止し不動産管理会社の様になるので高林開発と改称する。

又「第一高林産業」は今日の隆盛の基礎となつた商品売買の収益力を失うことになり上告人らはこの収益力を分散引継ぐ事になる。

これは「第一高林産業」の営業権譲渡と思われるが営業権の評価は実務上困難であるのでその代案として五年間を目標として上告人らの分の応じた後程相談する五項目位の基準で「親会社」自体の収入で賄えない費用位は負担して貰いたい。

上告人らが利用する建物機械の賃貸料(後日相談する)は別途「親会社」に支払うことになるが従来の「親会社」は営業収益でこれらの費用を負担して今日の大をなしたのであるから儲けを幾分か貰つても当然であるがその限度は分らない。

だから「親会社」が必要とする費用(固定資産の賃貸料は別途)を負担するというのが最低限度となる。これが代案の内容である。

この負担する費用は事業年度毎に違つてくるのは当然だが己むを得ない事と思う。

尚「第一高林産業」には繰越赤字が残つているがこれは会社分割の為支払つた退職金の為でその額は退職金の半分位であるからこれは五年以内に消滅させて貰い度い。

「親会社」としては従来からの実績からみるともつと貰つて当然であるが上告人ら育成の見地からこの程度で辛抱する。

この「親会社」よりの上告人らに対する給付(ウ)の(a)(b)(c)(d)を一括して「営業権の賃貸し」と称し上告人らの負担金を「営業権の賃貸料」(反対給付)と称しておるものであります。

(f) ただここで一番残念に思うことは中国地方同業者で知名度の高い高林産業の名前が消える事である。

これに対しては鳥取市にこれから有望と目される住宅設備機器の販売を目的とした「第二高林産業」を設立する。

これは米子の「第一高林産業」を親会社とし親会社全額出資の資本金二百万円の会社とする。

「第一高林産業」が「高林開発」と社名変更すると同時に米子に移転させる。但し営業マンはおらず暫くの間は営業活動は出来ない。

又子会社分割までの債権債務は「第一高林産業」名で行われている。「第一高林産業」が昭和四八年六月一日に「高林開発」と改称するのだから「高林開発」名で処理すべきであるがこの場合従業員はもとより得意先仕入先もこの事務処理に相当の混乱が予想される。

「第二高林産業」が米子に移転すれば実質は異るけれども高林産業名でこの債権債務は簡単に何のトラブルもなく処理できる。これが「乙第二〇号証」に高林産業で債権債務を引継ぎすると記載した趣旨である。これによつて債権者は安心する事ができる。

従つて「高林開発」(「第一高林産業」)に関係のない流動資産流動負債は昭和四八年六月一日附で「第二高林産業」に譲渡する。

上告人らは同日附で「第二高林産業」から得意先仕入先別の流動資産、流動負債を引継ぐ事になる。

但し不良債権と思われるものは「第一高林産業」に残し同社の責任において処理する。

又従来の営業課の女子事務員は売掛買掛の伝票整理しかしておらず到底上告人らの会社帳簿の記載は無理であるから上告人らの会計事務が軌道にのるまで「第一高林産業」から前田課長を出向させるから上告人らの会計事務は「第二高林産業」で行う如くする。

この事務量の測定は困難であるからその費用の負担は「第一高林産業」に準ずるものとする。

この事務委託に対して上告人らが「第二高林産業」に対して負担金として支払つたものであります。(昭和四八及び四九事業年度)

(g) この事務委託が終り「第二高林産業」と「第一高林産業」(「高林開発」と改称している)を合併させて「高林産業」(本訴でいう「第三高林産業」)の名称を残す事とする。

(エ) 以上は口頭による双務契約であり「親会社」及び「第二高林産業」の給付に対する反対給付であります。

上告人らが独立初年度において「第一高林産業」及び「第二高林産業」に夫々負担金を支払つた上多大の利益を計上(純資産の増加、担税力の増加)出来たのも「第一高林産業」及び「第二高林産業」よりの給付があつたからであります。

上告人らの独立初年度の経常利益は左記の通りであります。

<省略>

然し「第一高林産業」は約束通り繰越赤字が若干(一、二六一、六八一円)減つただけであります。

上告人らの負担金は右の収益に対する費用であります。(収益費用対応の原則による)

(オ)(a) 五項目基準について

分割前の会議において上告人ら子会社はそれぞれ経営規模が違うから「親会社」の経費負担につき五項目位の基準を設けて負担しましょうという打合せになつておりました。

分割後の昭和四八年九月五日項目基準の課題を「経営指導料」とする事とし子会社間で年間合計九百万円負担するという合意に達しました。これが「乙第一〇号証」であります。

(b) ところが期末に至り「第一高林産業」の不足する費用は九〇〇万円では賄えない事が判明しましたので米子税務署の昭和四七事業年度の調査官のところは前田課長と共に相談に行きました。

この時に相談官は「経営指導料は負担金と改めなさい。社長の報酬は「第一高林産業」だけから取つているがこれは子会社から分散徴収しなさい。「第一高林産業」の負担金の徴収は繰越赤字解消の為という要望に対して期間利益一〇〇円位は認めましょうということでありました。その時のメモは甲一〇〇号証として提出してあります。

(c) 税務署から帰つてから子会社役員と急遽会議を開き「乙第一〇号証」の五項目の一つである一律負担の項目を廃止し次の五項目基準で按分する事に決定致しました。

(ア) 売上高基準 一〇%

(イ) 人件費基準 二〇%

(ウ) 経営資本基準 二〇%

(エ) 使用固定資産基準 二〇%

(オ) 利益基準 三〇%

この基準でもつて子会社の負担金(営業権の賃貸料)を定めたものであります。従つて「乙一〇号証」では「乙一一号証」の負担金は計算できません。

(カ)(a) 以上の事は税務調査に当り関係会社の代表取締役は何れも高林健治が兼ねておりますので高林健治と前田課長が立合い「乙二〇号証」を援用し乍らその他の資料も多数提示し説明致しました。(「昭和四八年事業年度」から「昭和四九事業年度」までの第一次更正の為の調査に対して)

第三次更正の時の調査は「昭和四八事業年度」から「昭和五〇事業年度」まで。

(b) 「昭和五一事業年度」及び「昭和五二事業年度」は調査官は違いますがそれぞれ前三事業年度に右えならえであります。但し保証料の計算方法は異つております。

(c) 「昭和五三事業年度」及び「昭和五四事業年度」の上告人興産及び上告人工業に対する更正は繰越赤字に対する更正であり強いて更正通知を発行する必要のないものであります。

前の五事業年度の金額がきまれば自然に出てきます。

3 「昭和四八事業年度」から「昭和五二事業年度」までの更正通知書に附記された主な理由は上告人らが「親会社」及び「第二高林産業」(「昭和四八事業年度」及び「昭和四九事業年度」のみ)に支払つた負担金は損金支出しているが債務保証をうけた金額に対する保証料以外は贈与(寄付金)と認められるから損金不算入の限度計算をして各事年度の益金に加算したというものであります。

この更正通知の更正理由では一、2、(ウ)(c)にのべた事実を認めただけであり一審、二審の判決は寄付金(資産の無償による贈与)の解釈を根本的に間違えております。

この点から控訴審判決の取消しを求めます。

二、自由裁量は憲法第三〇条及び同八四条に定められた租税法律主義に違反する事について

1 上告人らに対する更正通知書に附記された更正理由によれば上告人らは負担金を損金支出しているが金融機関等から資金融資を受けるに当つて「親会社から担保提供ないしは債務保証を受けておりその役務の対価としては保証料は認めるとし負担金の額からこの保証料を減額した金額に対し損金不算入の限度計算をして益金に加算し、この加算金額を「親会社」への贈与(寄付金)としたものであります。

2 ところが被上告人は訴訟が始つてから足かけ四年もたつた昭和五五年三月一三日に至つて保証料を認定したのは誤りであつたと法廷で自白致しました。

3 更正理由で認めたものを訴訟に至つてなくする、つまり白を黒というまるで正反対の主張する事自体許されるべきものではありません。

税法はあつてなきに等しいものになります。

こんな自由裁量権は被上告人にはありません。

4 いくら課税権が国家にあるとしても国民は被上告人に課税を白紙委任している訳ではなく国民の財産権は憲法に保障され又納税義務は憲法第三〇条及び同八四条の租税法律主義により保護されています。

一審及び二審の判決ではこの被上告人の主張は寄付金の範囲を拡大したものだと自由裁量を認めています。

これは明かに憲法第三〇条及び同八四条にいう租税法律主義に違反します。

この点から控訴審判決の取消しを求めます。

三、(1) 法人税方第一三〇条<1>項(調査手続)違反について

(ア) 法人税法第一三〇条<1>項によれば被上告人は「内国法人の提出した青色申告書に係る法人税の課税標準又は欠損金額の更正する場合にはその内国法人の帳簿書類を調査により当該課税標準又は欠損金額の計算に誤りがあると認められる場合に限りこれをする事ができる」となつております。

(イ) 然るに被上告人は上告人らの金融機関よりの借入れについては保証料の計算をするに当り上告人らの帳簿書類を調査することなく反面調査の必要もないのに勝手に銀行に照会し(「昭和四八事業年度」から「昭和五〇事業年度」まで)その計算はでたらめで裁決でも一部取消され尚一審でも度々訂正しています。

(ウ) 保証料計算の基礎となる金額について念の為上告人らが銀行の写しを貰つて調査したところ「昭和四九事業年度」の商業手形七百五万四千四五三円は上告人機材の分としてあるがこれは上告人鉄道資材の分でありました。そうすると上告人機材と上告人鉄道資材の更正金額が違つてきます。同じグループとはいえ別法人であります。更正金額が違うから更正し直さなければ違法となります。(国税通則方第二六条違反)

(エ) 更正期間徒過の責任は被上告人側にあるのであり上告人らの関知しないところであります。

(2) 右の三、(1)に対する控訴審判決は次にのべる通り誤つています。

(ア) 判決一二丁裏最終行から四行目前掲各証拠によれば被上告人係官は右各更正処分のための調査として昭和五一年三月頃から同年八月ごろまでの間に五、六回「第三高林産業」に赴き高林健治並びに前田課長らからいわゆる高林グループの損益計算書、上告人らの資産表、負担金支払の契約書等の提示を受けると共にその説明をうけたとなつております。

(a) 調査にあたり上告人らは資産表を提示した事はありません。資産表とは財産目録の様なものと推定されますが上告人らはそんなものを作つておりませんから提示ができません。又被上告人側からも証拠として提出してありません。

これで以て更正処分の調査方法は相当であつたと認められるとはいえません。

(イ) 判決一三丁表二行目「これとは別に上告人らの取引先金融機関等に対して上告人らとの取引きについて文書で照会して回答を得ていたこと等を認めることが出来る」としています。

(a) これは三、(1)(ア)(イ)(ウ)にのべた如く調査手続のかしであり法人税法第一三〇条<1>項に違反しており「更正処分の調査方法として相当であつたものであると認められる」といえるものではありません。

(ウ) 「更正処分の調査方法が相当であつたものと認められる」の相当とは何ともつて相当の判断の基準とするのが不明であります。

調査方法が相当であればよいという事は恣意性が入り込む余地が多分にあります。

(エ) この調査手続は憲法による租税法律主義により保障されその具体化したものが法人税法第一三〇条<1>項であります。

金融機関等に照会しなくてもまづ上告人らの帳簿の勘定科目を調査すべきであり調査しても尚その帳簿に信用がおけない場合は反面調査を行いその誤りを確認すべきものであります。

反面調査のみ行つているから前記のずさんなものになります。

右の通りでありますから調査手続違反として控訴審判決の取消しを求めます。

四、公平負担(同一条件同一負担)の原則に違反することについて

(1) 保証料の計算に当り被上告人は最初の三事業年度分(「昭和四八事業年度」から「昭和五〇事業年度」まで)は商業手形の金額も保証料計算の対象にしているにもかかわらず次の二事業年度分(「昭和五一事業年度」及び「昭和五二事業年度」)は商業手形の金額は保証料計算の対象にしていません。

(2) 「昭和五一事業年度」及び「昭和五二事業年度」の更正通知書の附記理由は前の三事業年度分と同じ内容のものでありますが保証料計算に商業手形の金額を含んでおりませんから前の三事業年度と同じ計算方法でやれば更正金額は減つてくるのが当然であります。

(3) 後の二事業年度分の更正通知書を送付するに当つては前の三事業年度分の保証料が如何にして計算されているかは必ず検討すべきものであります。

後の二事業年度分の更正通知は昭和五四年三月二三日付で発行され保証料が違うというて争いになつたのは昭和五三年一二月一九日からでありますから被上告人には当然分つている筈であります。

ただ単に数字がならべてあつてその計算方法が示してあればそれでよいというものではありません。

いやしくも国民に課税する以上その恣意性は排除されなければなりません。

(4) 事業年度が違うから調査官が違うからといつても事業年度は連続しており同一上告人らに対する経済上の事実が同一である限り課税は一様でなければなりません。

でなければ憲法に定めた租税法律主義に反します。

(5) 控訴審判決では「同一納税者について複数の事業年度にわたる場合課税基準の解釈運用に差異があつたとしても何ら違法とはいえない」といつています。

この課税基準というのは課税標準と解釈して進めます。

(6) 控訴審判決がいうが如きものなら安易に恣意性が介在しその限界はどこまでかという事になります。

同一条件同一負担の原則は租税法律主義のもとでは厳守されべきものであります。

(7) 判決一三丁裏四行目「保証の一部を損金と認定したのを「改めた」とありますがこれは本書二、の各項にのべた如く誤りであります。

控訴審判決は四、の各項にのべた如く誤つておりますので取消しを求めます。

五、最高裁判例違反(更正理由記載不備)について

(1) 青色申告書に対する更正に附記すべき理由について最高裁の判例としては次のものがあります。

(ア) 最高裁二小昭和三八年五月三一日判決

「一般に行政処分に理由を附記すべきものとしているのは処分庁の判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制すると共に処分の理由を相手方に知らせて不服申立に便宜を与える趣旨に出たものである。」

尚「帳簿書類の記載以上に信憑力ある資料を適示して処分の具体的根拠を明かにする事を必要とする」となつています。

(イ) 最高裁二小昭和三八年一二月二七日判決

更正の理由附記は「その理由を納税義務者が推知できると否とにかかわりない問題といわなければならない」となつています。

(ウ) 最高裁二小昭和四七年三月三一日判決

「かりに再調査決定の附記理由に不備がなかつたとしてもこれにより遡つて更正処分の附記理由の不備が治癒されると解することはできない」となつております。

同旨の判決には次のものがあります。

(エ) 最高裁三小昭和四七年一二月五日判決

(オ) 最高裁二小昭和五一年三月八日判決

(カ) 最高裁一小昭和五四年四月一九日判決

(2) 上告人らに対する更正通知書に附記された更正理由には次にのべる様な「更正理由の記載不備」があります。

(ア) 「第二高林産業」は上告人らにとつては親会社ではない事について

(a) 昭和四九年一〇月改正された商法第二七四条の三は「他の株式会社の発行済株式の総数の過半数に当る株式を有する会社を親会社と称するとなつています。(昭和五六年改正商法第二一一条の二に記載)

(b) 甲九五号証の証拠に示す如く「第二高林産業」は鳥取市から昭和四八年六月一日米子へ移転したもので「第一高林産業」(高林開発)の全額出資の資本金二百万円の子会社であります。

甲九五号証は昭和四九年五月三一日被上告人の許へ確定申告してあります。

(c) 「昭和四八事業年度」及び「昭和四九事業年度」の更正理由では「第二高林産業」も上告人らの親会社だと記載されております。調査に当り昭和五一年三月ごろから八月ごろまで五、六回「第三高林産業」に行き各書類の提示もうけ説明もうけたとの事でありますがよく分つていない様であります。証言中に「第二高林産業」はいわゆる親会社だといつております。

この世の中にはいわゆる親会社は存在しません。

(d) 前期両事業年度には上告人らは金融機関等から資金融資をうけるに当り「第二高林産業」から担保提供ないし債務保証をうけておりませんし又固定資産も借りておりません。又経営指導をうけた事は何もありません。

(e) 「第一高林産業」と「第二高林産業」とは子会社の性格も違いますし負担金の性格も違います。寄付金として負担金が合算されていてどれだけが「第一高林産業」に属し「第二高林産業」に属するのか不明であります。

保証料を減額して損金不算入額が計算されていますが「第二高林産業」の負担金の額からは保証料が発生する訳がありません。

ただ金額が示してあつて計算方法が示してあればそれでよいというものではありません。

(f) 役務の対価として認めてやると称して各金融機関よりの借入金の合計が明示してありますがこれは前述の通りでたらめな数字であります。

(イ) 確定申告書がありその他の書類も貰い六ケ月間に五、六回の説明もうけて尚この状態では判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制するというには程遠いものであります。

(ウ)(a) 控訴審判決一〇丁裏の最終行の二行目から最終行において「第二高林産業」を親会社だといつていますがこれは前述の通り誤つております。

(b) 同判決一二丁表六行目では「被上告人が一審に於てその主張を変更したので保証料計算の基礎である金融機関からの借入金の具体的内容の記載不備の主張は前提を欠くものであるが」といつていますが「この主張の変更した」との判決理由は誤りである事については本書二、1、2、3、4でのべた通りであります。

(c) 結局判決理由では「更正理由の記載不備はない」といつていますが本書五、(ア)(a)(b)(c)(d)(e)(f)及び(イ)にのべた如く控訴審判決も誤つております。

右の通りでありますから「昭和四八年事業年度」及び「昭和四九事業年度」の更正は「更正理由記載不備」としてその取消しを求めます。

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